青木建設が倒産した。先週の『注目銘柄』の中で一番株価の安かった銘柄だ。その時(11月28日)の終値は24円だったが、12月6日には2円で引けた。この株は12月7日から整理ポストに回され、来年の3月7日まで取引されて、その後は上場廃止になる。ベテランの投資家なら同社が竹下元総理の政治銘柄として話題になったことを覚えているはずだ。
アフガニスタンのタリバン騒ぎがようやく静まりかけた矢先に準大手ゼネコン倒産。これがデフレ・スパイラルだといっても納得しない専門家は竹中平蔵大臣ぐらいだ。
少々数字が並ぶが、我慢してお付き合いを願い上げる。
準大手ゼネコンの青木建設の単独負債総額は3721億円で、連結負債は5221億円だ。同社の下請け企業は、末端まで含めれば約5000社に達するそうだ。今年の株価は5月1日に68円の年初来高値をつけたが、倒産後は1〜2円の整理ポスト値段だ。有限責任である株主にはお気の毒な暴落だが、私にはそれ以上に関連会社を通じて一般社会に与える影響が心配だ。とくに同社の大株主や支援銀行、債権者などが厳しい負担を求められるだろう。その債権者は約2200(法人・個人)だ。これが連鎖的な倒産を引き起こすと、日本経済の全体が大きく傷つく。
とくに最近のような大型の不況下では、景気や経済に与える悪影響を最低限度に押さえる必要がある。ところが建設業は大手を頂点にして、ピラミッド型に下請け会社が積み上がっている。下の方の会社が一つ二つ潰れても大きな問題にはならないが、いざ頂点が壊れると、全体が崩壊する連鎖反応の起こりやすい構造なのだ。関連業者も多く、従業員の数も膨大だ。仮に、倒産や失業が拡大すれば、景気全体にも大きく影響する。そのためにも政府当局や関係者は速やかに救援措置を講ずる必要がある。建設準大手の倒産はその会社一社の問題では済まない。当然、現在の経営陣は自社の経営責任だけではなく、その社会的な責任も問われる。
最近、米国でも指摘されているが、経営不振や企業倒産を同時多発テロのせいにするケースが目立つ。しかし、青木建設の過大な借金による放漫経営は、テロ発生の十数年前、つまり、バブル経済の時代から続いていたものだ。確かに旅行会社や航空会社の業績に影響がでることは認めるが、青木建設の場合には同時多発テロとは無関係だ。この会社は株式市場の信用を失ってからすでに相当な年月を経過している。99年にはメインバンクから巨額の債務免除も受けている。
仕事が減ったから倒産したのか、市場での信用を失ったから仕事が減ったのか、経営者はその順序を考えるべきだ。いま、東京市場の建設ポストをみると、両手の指では数えきれないほど株価が二ケタの銘柄が並んでいる。これらは残念ながら倒産リスクがないとはいえない。業種を問わず、低い株価は、市場が経営者に発している警告だ。
2002年の3月末までは、超低位株への投資リスクは危険水域にあるだろう。